立法と国民議会
政府もしくは国民議会議員から提案された法案は、国民議会に提出され、審議・可決を受けた後、首長に回付され、首長がそれを裁可、公布する。
新法は官報に記載され、首長の裁可後約1ヶ月で効力を発する。
首長は議会から回付された法案の再審議を議会に求めることができるが、再審後、議会がその法案を3分の2以上の賛成で再び可決した場合は、首長はそれを尊重し、法案を裁可・公布することとなる。
国民議会が閉会中または解散中の場合は、首長が、首長令をもって法律を公布することができる。 行政関連規定や商業規則などはその関係法に基づき、首長令や省令により公布される。
国民議会の概要
クウェイトは湾岸6カ国のなかで最初に民主的な議会制度を導入した国であり、クウェイト国民議会は立法権を有する民選議会である。一院制議会で政党の結成は許されていない。議員数は50名、任期は4年である。1962年制定の憲法に基づき第1回国民議会総選挙は1963年1月に実施され、それ以降、1999年7月まで計9回選挙が行われている。
有権者は1995年7月の国籍法改正前までは、第一級クウェイト人で満21歳以上の成年男子に限られていた。第一級クウェイト人とは、(1)1920年(第9代首長サーレムがクウェイト防衛のため新たに城壁を建設した年)以前から1959年のクウェイト人国籍法公布の日までクウェイト(1922年のオカイル条約により国境が画定されたクウェイト)内に居住していた者およびその直系子孫ならびに、(2)1920年以前よりクウェイトに居住していたがクウェイトを離れ、いつの日かクウェイトに戻る意思がある者も上述(1)と同様に継続してクウェイトに在住していた者とみなされ、第一級クウェイト人とされている(例えば1958年7月のイラク革命以後クウェイトに戻った人々)。この内容が国籍法第1条に記載されていることから、これに該当する人々が便宜的に第一級クウェイト人と表現されているのである。しかし、クウェイト国内ではこのような呼称は使用されておらず、「国籍法第1条適用の国民」という正確な表現が使われている。
1995年7月に国籍法が改正され、帰化市民に対する選挙権付与の条件が緩和された。旧法では、帰化市民が選挙権を獲得するためには、市民権獲得後30年間経なければならなかったが、法改正によりその期間が20年に短縮された。また、帰化市民の直系子孫で満21歳以上の男子にも選挙権が与えられることになった。この結果、25,000人以上の帰化市民男性が選挙権を獲得した。こうした法改正により有権者数は増加しているもののクウェイトの女性にはいまだ選挙権も被選挙権も認められていない。
一方、正規軍(国家警備隊を除く)と警察業務就役者は選挙権、被選挙権ともに、その行使は停止される。但し、退役すれば直ちに権利は回復される。また、有権者は毎年更新される居住地選挙人名簿に登録されていなければならない。
被選挙人は第一級市民で、選挙人名簿に登録されており、無犯罪者でアラビア語の読み書きに支障のない30歳以上の男性に限られる。また、公職(政府、軍、警察、検察など)にある者は職を辞さない限り、被選挙権の行使はできない。
支配家族であるサバーハ家のメンバーは法律上、選挙権、被選挙権ともに有しているが、行使しないのが慣例となっている。
選挙制度は、クウェイト国内を25の選挙区に分割し、それぞれの選挙区から2名を選出する中選挙区制である。選挙区ごとの有権者数にはかなりのばらつきがあり、最多の区と最少の区の間では、年により違いはあるものの約7倍から8倍もの開きがある。